情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「お前…」

どうしよう。なんて言えばいい?
俺は咄嗟に下を向いた。

「彪。お前、また絵描いてたのか? 夢中になり過ぎだろ。もう三日もたっちまってんぞ」

そう言って笑った。
玄が笑った…
しかも絶対気付いてるのに…
知らないフリしてくれてるんだ。

「あ、ああ。ははは! 悪い。そんなにたってたか? 通りでねみぃし腹も減るわけ…」

何故か玄の顔を見て一気に安心した俺は熱と寝不足と空腹もあって、そのまま意識を手放してしまった。


ピッピッピッピッ

どこからか機械の音が聞こえて目が覚めた。

ここは…

見慣れない天井。

カバっと起き上がる。

「彪!」

すると隣から玄が顔を出した。

「玄…? ここは…? あれ? 俺…」

「良かった! お前寝過ぎ。もう2日たつぞ。ここ俺んち」

そう言ってまた玄は笑った。
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