情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「俺は玄の親父の貴文(たかふみ)だ。今日から俺がお前の親父だ。いいな?」
俺はコクっと頷いた。
玄の親父は顔をクシャッとさせ微笑んだ。
「敬語はいらん。パパって呼んだっていいぞ?」
ニヤニヤとイタズラに笑っている。
「親父。からかうな。彪。親父でいい。皆んなそう呼んでる」
玄が教えてくれる。
「皆んな?」
「ああ。皆んなだ」
「兄弟?」
親父と玄は顔を合わせる。
「ああ。兄弟だ」
玄が言った。
兄弟…いるんだ。
「俺は子だくさんなんでな。ははは!」
親父が豪快に笑う。
「彪。お前、絵が好きなんだって?」
「は…う、うん」
「うちにいっぱい絵あるぞ。見るか?」
「絵? み、見たい」
「玄。連れてけ」
「ああ。彪、行くぞ」
そう言って医者が点滴を外してくれ、連れて行かれたのは黒澤家の大浴場だった。
家に大浴場があんの?
旅館か何かか?