情炎の花〜その瞳に囚われて〜
ありゃヤベェな。

どれ。玄に連絡するか。
俺も席を立ち外へ出る。
表はうるさいな。
そう思って路地に入った時、ちょうど裏口が開いた。

すると今さっきショーを終えたばかりの彼女がなにやら慌てた様子で出てきたではないか。
目が合う。

「あ!」

俺を見るなり声をあげられる。
え? なに?

「あ、あの。先日はすみませんでした」

急に謝られた。
なんか人違いしてないか?

「え? 先日って?」

「あの…雨の日に、飛び出して…猫を…」

ステージ上とは打って変わって小さな声でゴニョゴニョと話す。

え? 猫…? 
まさか…嘘だろ? この子が? あの子? 
どこか似てるとは思ったけどまさか本当に同一人物⁈

「ポールダンサーだったの⁈」

「え? あ、はい…。あの、あの時は大変お世話になりました。ステージからあなたが見えて、お礼を言いたくて…私あの時、名刺を忘れてしまって…」

そうだったのか。
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