情炎の花〜その瞳に囚われて〜
〜凪side〜

あの衝撃的なキスを彼としてからすっかり頭の中は、彼の事でいっぱいになってしまった。

また店に来たらジャケットを返せるように、クリーニングをしてロッカーに入れてある。

ずっと。

そう。彼はあの日から結局また一度もこの店には来なくなった。

ならなんであんなキスをしたの?
気分で出来るものなのだろうか。
疑問ばかりが浮かぶ。

情熱的で、官能的なそんな熱いキスだった。

そっと唇に触れる。

思い出すだけで心臓がドクンドクンと強く脈打つのを感じる。

彼に会いたい…

名前はもちろんのこと、声も聞かせてくれなかった。

あの口から一体どんな声を出すのだろう。
どんな話し方なのだろう。

キスは初めてだった。
下手だったのかな…

正解がわからない。

なんならどんな風にしたのかもよく覚えていない。

ただ、まるで食べられてしまいそうな、そんな強烈なキスだったのは覚えてる。

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