情炎の花〜その瞳に囚われて〜
そして私も気になっていた事を聞いた。
「彪さんは、どうして彫師を?」
すると彪さんもまた少し考えた後、ゆっくりと話し出した。
今の彪さんからは想像できないような過酷な幼少期。
父親からの暴力。
初めて出来た友人の助け。
そこで家族が出来て今の彪さんがいると。
「え! 凪ちゃん⁈ ちょっと! だ、大丈夫?」
気づけば泣いていた。
「彪さん…。よかったですね。本当によかった」
「凪ちゃん…」
彪さんは眉を下げてはにかむように笑った。
「そうだね。本当に。よかったよ。命の恩人だ」
友人の事を心からそう思っているのが感じてとれた。
「なんか俺たち、ちょっとだけ似てるね」
私もそう感じていた。
親に愛されなかった者同士なんだなって。
私の他にもいたんだなと。
そしてこれも何かの縁だという事で連絡先を交換して解散となった。
私にとっては彪さんが友達第一号だ。
彪さんには幸せになってほしい。
心からそう思った。