情炎の花〜その瞳に囚われて〜
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俺は部屋に戻って、ソファに横になった。

玄…。
あんな辛そうな顔、初めて見た。

俺は黒澤家に保護されて大学卒業まで世話になった。
それでも名前のとおり正解には養子でも、組員でもない。
ただの水野彪だ。

それは玄の親父が決めた事だった。
養子になれば黒澤組として、組員として生きていく事になると。

彫師になるなら一般人でなければならないと。

だから俺は今こうして夢を叶える事ができた。
本当に感謝しかない。

組員でない俺は黒澤組で育ったものの、ギリギリ一般人として生きられるから自由に好きな事をしていられる。
狙われることもない。

玄が言っているのはそういう事なんだろう。

安易に近づいて危険な目に合わせないように。

俺とは違って子供や女は特に狙われやすい。

だから玄は女を抱くにも組員が用意した女しか抱かない。

玄に自由はない。
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