情炎の花〜その瞳に囚われて〜
〜玄side〜

彪が帰った後、俺はボトルのままウィスキーを煽る。

凪…

まさかそんな辛い過去を背負っていたなんて。
俺はステージの上での凪はよく知ってる。
俺に向かって挑発的な笑みを向ける凪。


彪から話を聞いても俄かには信じられないのが正直なところだった。

あの強烈なパフォーマンスの裏にそんな血の滲む努力があったとは。

内から出るオーラはそういう逞しさからだったのか。

だから目が離せなかったのだろうとすぐに理解できた。

ただの美人を見ただけではこうはならない。

そしてあの路地で男に言い寄られていた時の凪は、ステージの上の凪とはまた違った。

か弱く、儚い。優しくしないと壊れてしまいそうな、そんな感じだった。

どっちの凪が本当の凪なのかと思ってはいたが、まぁどっちも凪なんだろう。

"俺が側で守ってやりたい"

そんな考えが頭をよぎる。

何を考えてる。
俺の側にいたんじゃ守るどころか危険な目に合わせるだけだ。
自由もない。

俺には取り上げるものしかない。
与えられるものなんて何ひとつない。
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