情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「彪さん、大丈夫ですか?」

何も言わない俺を心配そうに見つめる。

「あ、ごめん。大丈夫。なんでもない。その人とは…」

凪ちゃんはわかりやすく顔を赤く染めた。

「一度だけ…キ、キスを…しました」

だよな。玄も言っていた。
一体どういう流れで?
それは俺も気になっていた。

「ちょ、ちょっと詳しく教えてくれる?」

凪ちゃんの話はこうだった。
新店舗オープンの日に見にきていた玄と初めて目が合って、それから何度も見に来るようになったと。
でも目が合うだけで、話したことはないし、拍手もされた事がないと。

でも、ある日パタリと来なくなって寂しかったと。
そして雨の日、ショーが終わって裏口から出たら、変な男に待ち伏せされていて、どうする事も出来ずにいた時、玄が一人で助けてくれたと。
その時キスをしたと。

玄が一人で?
あり得ない。
松田はなにしてたんだ⁈

「その、助けてくれた人の他にって誰か…」

「いえ。いなかったと思います。いつもショーを見に来る時は、ちょっと怖そうな人と二人で来てましたけど…」

だよな。
松田だな。

でも路地に助けに行ったのは玄だけだったって事か…
まさか車から一人で飛び出したのか?
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