情炎の花〜その瞳に囚われて〜
「凪ちゃん…ほら、泣くなよ」

俺は涙を拭いてやる。

凪ちゃんの涙を拭くのは俺の仕事じゃない。
玄だ。

玄は凪ちゃんを想うからこそ離れる事を決めた。
でも凪ちゃんも玄を想っているなら話しは違うんじゃないだろうか。

俺は決めた。
玄に凪ちゃんの気持ちを伝える。

二人は一緒になるべきだ。

俺のくだらない独占欲なんかで邪魔できるものじゃない。

「凪ちゃん。落ち着いた? 会えるといいな。その人に」

「はい…」

凪ちゃんはそれはそれは柔らかく微笑んだ。

「それじゃ、そろそろ帰ろうか。途中まで送ってくよ」

「すみません。取り乱してしまって。ありがとうございます。これって、好きって感情ですか?」

「…うん。きっとそうだよ」

俺はこの気持ちに蓋をした。
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