情炎の花〜その瞳に囚われて〜
そして祖母がフッと微笑んだ。

初めて見た。

眠い…

すると今度はいるはずもないあの人が現れた。
玄…さん。

あ、これは夢か。

私をチラッと見たかと思えば、そのまま向こうに行ってしまう。

待って!
嫌だ。
せっかく会えたのに…

置いて行かないで…
私を見て。

私を連れてって…

声が出ない。
手を伸ばす。

私は必死に追いかける。

そしてまた彼が振り向いた。

こっちに来いと。
言っているみたいな…

もう少しで届きそう…

彼はまた歩き出した。

待って…
玄さん…

待って。
玄さん!

玄さん!

聞こえないの?

玄っ!

夢だしもう開き直って呼び捨てで呼ぶ。


< 95 / 259 >

この作品をシェア

pagetop