近付きたいよ、もっと、、、。
 翌日、いつもより早く教室に着いた咲結は優茉にどう声を掛けるべきか悩んでいた。

 昨日の話からして、朔太郎との交際は反対な訳で、別れるつもりが無いと口にすれば、この先優茉と一緒に居る事が出来なくなりそうな予感すらしていた咲結。

 だけど、だからと言って朔太郎と別れるという選択をするつもりも無く、どうにか優茉に分かってもらいたいと考えた。

 けれど、良い案は一つも思い浮かぶ事なく、クラスメイトたちが続々と登校して来て、その中に優茉の姿もあった。

 いつもならば視線を合わせて挨拶を交わすのだけど、優茉の方も気まずいのか、お互い視線を合わせる事をしなかったので挨拶を交わす事が無かった。

 明らかに様子のおかしい二人。

 それは周りから見ても分かる程。

 いつも一緒に行動している二人だけど、今日は言葉すら交わさない。

 そんな二人を一番気にしていたのは玉井だった。

 昼休みになり、優茉は別のグループの女子とお弁当を食べる中、咲結は他のグループの女子から誘われるもそれを断って弁当を手に一人教室を出て行った。

 そんな彼女の後を追いかけた玉井。

 咲結が向かった先は屋上で、元気の無い彼女は手摺りを背に座ってお弁当を広げていく。

 そして、浮かない表情のままでお弁当を食べ始めた咲結の前に玉井が姿を見せると、無言で隣に座って彼もまたお弁当を広げていく。

「どうしたんだよ、今日、元気ねぇじゃん。寿とも全然話して無いみたいだし……」

 いつもの咲結ならば、玉井が隣に座った段階で文句の一つでも口にしそうなものなのだけど今日はそういう気分になれないらしく、ただ無言で彼の言葉に耳を傾けては問い掛けに答えもせずにお弁当を食べ続けていた。
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