心から願っています
先輩の言っていることがわからなかった。

でもそれは一瞬。理解できたと同時に、頭の中が真っ白になった。

「俺の…、俺と、付き合って…ください」

もう、真っ白の白もない。 言葉が理解できるけど、理解できない。

呼吸をするのが精一杯。

顔があつい。 思わず手で顔を覆う。 とりあえず、落ち着かないと何もできない。

先輩を見ると、綺麗に頭を下げている。

「先、輩?」

とりあえず、先輩に顔を上げてもらわないと、と思ったけど、なんていうのが良いのか全くわからない。

「ごめん、急すぎで」

先輩の言葉に、私は、首を振った。

先輩の方を見ると、困っている顔で笑っていた。 そして、赤かった。しかも耳まで、

人前で話すことに慣れてるし、いつもクールな先輩が、こんなに赤くなるなんて。

なんか、そう思ったら、落ち着いてきて、少しホッとした。

と同時に、涙がこみ上げてきた。 とっさに上を向く。

でも、もう限界。 頬に涙が伝っているのがわかる。

手で拭くけど、次から次へと流れてくる。

「え、依織? な、なんで泣いてんの…?」

先輩を困らせている。

でも、言葉を発したらもっと泣き止めなくなりそうで、また首を振るだけ。

「え、うそ、え、ごめん」

違う、全く違う。謝られるようなことなんて、ひとつもない。むしろ…

思うだけで言葉にできない。 告白されたときから、ほとんど喋ってない。とりあえず泣き止まなくちゃ。

そう思うと同時に、みんなのところに走っていた。
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