心から願っています
2.「お願い」の驚
【依織 Side】
友秋先輩は3位だった。
バトンパスがうまくいっていなかった。 もし、うまくいってたら、1位だったかもしれない。
でも、それを思うと同時に、私は先輩にお願いすることを決めた。
もしかしたら、先輩は冗談で言ってきたのかもしれないけど、そうなったら、私は冗談めかして、聞けば良い。
トラックを見つめながら、友秋先輩の走っている姿を思い出す。
仲間のために必死に頑張っている真剣な顔。
整っていて理にかなっている美しいフォーム。
中学生の頃から、努力で身につけているフォームだって知っているから、
余計綺麗だと思える。
そして、一歩一歩の足音。
実際に聞こえていなくても、今まで聞いてきているから、今でも聞こえてきそう。
先輩は走っている姿が最高に似合っていて、1番カッコいい。
3年生のリレーが始まる。
「泣いても笑ってもこれが最後の種目、3年混合選抜リレーです。」
もちろん、陸上部の先輩もたくさん出るから応援しないと。心の中でだけど、、
「依織」
突然、名前を呼ばれて振り返る。声で予想していた通り、そこには友秋先輩がいた。
「お疲れ、依織が勝っちゃったね」
「先輩もお疲れ様です。かっこよかったですよ」
憧れの先輩とこんなふうに話せて、満足感に浸ってしまう。
ありがとう、と言った先輩は少し照れくさそうにしている。