恋の花火はコーヒーのあとで
「なに急に? てゆうか勝ったら何があるの?」

「もし繭香が勝ったら俺の“失恋花火”の話もするわ」

「えっ……航平失恋したの?!」

「うっせ、点けんぞ」

すぐに二つの線香花火はじりっとオレンジ色の小さな光が灯り、ぱちぱちと眩い光を放ちながら競うように暗闇に爆ぜていく。

線香花火は昔からあんまり好きじゃない。

儚くて美しいけれど胸がぎゅっと痛くなる。まるで報われることがない自分の恋心みたいに。

「もう恋なんて一生できる気しない……」

泣き腫らした目で私が小さな輝きを見つめながらポツリと呟けば、航平が深いため息を夜空に向かって吐きだした。

「なら俺も一生片想いだわ」

私は航平の言葉を二度頭に浮かべてから花火越しに航平に視線を向けた。


「今の……どういう意味?」

「くわしく聞きたい?」

「べ、別に」

気になったのは事実だが、航平からさっきの答えを知りたいかと問われれば素直に知りたいと言えない、拗らせてる自分がまたひとつ嫌になる。

もう線香花火も終わりが近い。踊るように跳ねていた火花はビー玉くらいの大きさになって、今にも消えてしまいそうだ。
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