恋の花火はコーヒーのあとで

おまけ。航平side

花火が終わると俺は繭香を連れて公園をあとにした。時折冗談を交えながら繭香を連れて、自宅のアパートに帰ってきただけで俺の心臓はすでに駆け足だ。

「はい、どーぞ」

「あ、お邪魔します」

先に靴を脱いだ俺はスリッパを繭香に差し出したが繭香は玄関の扉に視線を向けていた。

「繭香?」

「えっと、鍵閉めとく?」

その言葉が根が真面目な繭香らしいというか、男慣れしてないというか……ようは俺のことを信用している上で気遣いをしているのだ。

勿論鍵を閉めてしまえば、仮に俺に押し倒されそうになってもすぐに逃げ出せない。でも『ちゃんと送る』と宣言している俺に対して不信感を持っていると思われるのは嫌だ、だから鍵は閉めておくかどうか俺に聞いてるんだろう。

「開けといていいよ、どうせすぐ送るし」

「えと……わかった」

そう言うと、繭香はパンプスを揃えてからようやくスリッパを履き、俺についてリビングへと足を向けた。

そしてリビングにくるなり、すぐに繭香が窓の外を指差す。

「へ〜、航平の家と私の家やっぱ近いね」

「当たり前じゃん、斜め真向かいなんだから」

「こっから私の部屋見えるし」

「え、そうなのか?」

(初耳だな)

俺はなんてことない顔をしながらもポットのスイッチをオフにすると、窓際に立っている繭香の隣に並んだ。
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