恋の花火はコーヒーのあとで
──繭香は俺のことなんて見てない。
繭香にとって俺はただの同期。それ以上でもそれ以下でもない。
繭香の手書きの文字が綺麗なことも、思わず触れたくなる様な艶やかな黒髪も仕事に対していつも誠実に取り組んでいるのも、繭香が褒めて欲しい、見て欲しいと思っているのは香田課長ただ一人だから。
「航平? どしたの?」
「え? あ、いやマグカップどれにしようかなって」
咄嗟に誤魔化したが繭香に神妙な俺の顔を見られたかもしれない。
「ん? 種類あるの?」
「あー、まあな」
繭香がソファーから立ち上がると食器棚に手をかけたままの俺の横に立った。
繭香の長い髪から甘い匂いがして、俺の心臓は勝手にひとつ跳ねる。
「わぁ〜可愛い。ティーマ私も好きなんだよね」
「マジか、どの色がいい?」
俺は平然と嘘をつきながら、白、黒、ブルー、イエローの四色のマグカップを目で指し示した。
「私が会社で使ってる白のマグカップもティーマ」
「そう言われたらそうかもな」
そんなこと知ってる。
繭香が会社で使っている白色のマグカップがあるのだが給湯室でコーヒーを入れた際、いつだったかイッタラというメーカーのティーマシリーズが好きなんだと話してくれたことがあった。
使い心地抜群で丈夫で手のひらに収まるフォルムがとにかく可愛いらしいとのことだった。
だからつい買い物に行った際見かけて、繭香の顔が浮かんでカゴにいれてしまっただなんて、一生言うことなんてないだろう。
「悩むけどー、やっぱこれ」
「白な」
「航平はブルーにしたら? なんか航平ぽい」
「じゃあそうする」
思わず口角が上がりそうになった。いまこの瞬間から俺の愛用のマグカップの色はブルー、一択だ。
繭香にとって俺はただの同期。それ以上でもそれ以下でもない。
繭香の手書きの文字が綺麗なことも、思わず触れたくなる様な艶やかな黒髪も仕事に対していつも誠実に取り組んでいるのも、繭香が褒めて欲しい、見て欲しいと思っているのは香田課長ただ一人だから。
「航平? どしたの?」
「え? あ、いやマグカップどれにしようかなって」
咄嗟に誤魔化したが繭香に神妙な俺の顔を見られたかもしれない。
「ん? 種類あるの?」
「あー、まあな」
繭香がソファーから立ち上がると食器棚に手をかけたままの俺の横に立った。
繭香の長い髪から甘い匂いがして、俺の心臓は勝手にひとつ跳ねる。
「わぁ〜可愛い。ティーマ私も好きなんだよね」
「マジか、どの色がいい?」
俺は平然と嘘をつきながら、白、黒、ブルー、イエローの四色のマグカップを目で指し示した。
「私が会社で使ってる白のマグカップもティーマ」
「そう言われたらそうかもな」
そんなこと知ってる。
繭香が会社で使っている白色のマグカップがあるのだが給湯室でコーヒーを入れた際、いつだったかイッタラというメーカーのティーマシリーズが好きなんだと話してくれたことがあった。
使い心地抜群で丈夫で手のひらに収まるフォルムがとにかく可愛いらしいとのことだった。
だからつい買い物に行った際見かけて、繭香の顔が浮かんでカゴにいれてしまっただなんて、一生言うことなんてないだろう。
「悩むけどー、やっぱこれ」
「白な」
「航平はブルーにしたら? なんか航平ぽい」
「じゃあそうする」
思わず口角が上がりそうになった。いまこの瞬間から俺の愛用のマグカップの色はブルー、一択だ。