アリアさんの幽閉教室〜5分間恐怖の世界〜
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あっという間に時間は過ぎた。
お母さんには、内緒で家を出てきた。
だって夜に出かけるなんて怒られちゃうから。
18時55分。
わたしは学校の正面玄関前で、星七くんを待っている。
空は日が落ちて、夜が覆っていた。
校舎を覗き込むと、毎日通っている学校のはずなのに。
全く違う場所のように見えた。
ドクドク……。
これから起こることへの恐怖と不安と。
いろんな感情で心が落ち着かない。
暗い校舎を覗き込んでいると、ふわりとした声が届く。
「……杏樹! 手紙見たよ。こんな時間に呼び出して。なにかあったのか?」
声がする方をゆっくり振り向くと。
星七くんだった。よかった。やっぱりきてくれた。
走ってきたのか、肩を上下にゆらしていた。
星七くんは、顔をあげると目を丸くさせる。
「……あのさ」
「ごめんね。びっくりさせちゃって。大丈夫だから。一緒に中に入ろう?」
なにか言おうとした星七くんの腕を組む。
だって時間がなかったんだ。
――この時の時刻は18時58分。
早くしないと、約束の19時になってしまう。
もしも時間に遅れたら、アリアさんを怒らせてしまうかもしれない。
そう考えたわたしは焦りもあって、彼の腕をぐいっとひっぱる。