アリアさんの幽閉教室〜5分間恐怖の世界〜





 あっという間に時間は過ぎた。
 お母さんには、内緒で家を出てきた。
 だって夜に出かけるなんて怒られちゃうから。

 18時55分。
 わたしは学校の正面玄関前で、星七くんを待っている。

 空は日が落ちて、夜が覆っていた。
 校舎を覗き込むと、毎日通っている学校のはずなのに。
 全く違う場所のように見えた。

 ドクドク……。
 これから起こることへの恐怖と不安と。
 いろんな感情で心が落ち着かない。


 暗い校舎を覗き込んでいると、ふわりとした声が届く。
  
「……杏樹! 手紙見たよ。こんな時間に呼び出して。なにかあったのか?」

 声がする方をゆっくり振り向くと。
 星七くんだった。よかった。やっぱりきてくれた。

 走ってきたのか、肩を上下にゆらしていた。
 星七くんは、顔をあげると目を丸くさせる。

「……あのさ」
「ごめんね。びっくりさせちゃって。大丈夫だから。一緒に中に入ろう?」

 なにか言おうとした星七くんの腕を組む。
 だって時間がなかったんだ。
 ――この時の時刻は18時58分。
 
 早くしないと、約束の19時になってしまう。
 もしも時間に遅れたら、アリアさんを怒らせてしまうかもしれない。
 そう考えたわたしは焦りもあって、彼の腕をぐいっとひっぱる。

< 8 / 113 >

この作品をシェア

pagetop