アリアさんの幽閉教室〜5分間恐怖の世界〜
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「裁縫セットなんて持ち出してどうしたの?」
お母さんは針と糸をもって格闘するわたしに、驚いたように声を掛ける。
「ましゅちゃんの腕が取れちゃったから、なおすんだよ!」
不器用に針と糸を使う私を見て、呆れた顔をする。
あの後、気づくとアリアさんの姿は消えていた。
おそるおそる閉められていたドアを開けると、すんなりと開いたんだ。
夜の学校に招待されたら。
恐ろしい見た目の幽霊に追い回されて……。
あの出来事は、現実とかけ離れすぎてた。
まるで、すべて夢だったような…。
そんな風に思ったけど。
ぼろぼろになったましゅちゃんをみて、現実だったとも思い返した。
「下手くそだなぁ。お母さんがやってあげようか?」
ましゅちゃんの腕をなかなか上手く直せないわたしを見て。
お母さんは痺れを切らした。
だけどわたしは断る。
「わたしが治してあげたいんだ」
「あらあら。そんな子供みたいなこと言って……ぼろぼろになった人形なんて捨てた方がいいわよ」
「捨てないよ!」
わたしはすぐに言い返した。
もう捨てないよ。
だって、わたしとましゅちゃんは友達だから。
そう伝えた瞬間、薄いピンクの瞳がキラっと輝いて見えた。