傾国の貴妃
「…今、何て?ごめんなさい。もう一度仰って下さいますか?」


日常が、日常じゃなくなる。

もしかしたらもうこの日から、私には確信のようなものがあったのかもしれない。


「ハッ!ですから、陛下が今宵はこちらでお休みになる、と」


「…陛下、が?」


「はい。ルシュドの姫君。心積もりをしておくように、と陛下からの御達しに御座います」


なんで?

陛下が?

こちらで?


「…お待ちしております、とお伝え下さい」


なんとかパニックを起こしかけていた頭をフル回転して、陛下の遣いとしてやって来たらしい若い従者にそれだけを伝える。

なんで?

どうして、今更……
< 10 / 107 >

この作品をシェア

pagetop