傾国の貴妃

(仮)異端の罪

見つめ合い、微笑む。

隣へ腰掛ける。

指先だけで触れ合う。

そんな些細なことでこんなにも注目を浴び、非難の眼差しが飛んだことは今までにあっただろうか。

人々は変化を嫌う。

人々は変わらぬ日々の安心を願い、求める。

それはいつの世にも変わらないこの世の理。

――私はそんな人々にとっての過ちであった。

どんなに私がギルを愛していても。

ギルが私をただ一人の正妃だと認めてくれても。

私はルシュドの姫君なのだ。

サマルハーンではなかった。

西端に位置する、小さな小さな邑の姫君でしかなかった――…
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