傾国の貴妃
会いたい。

触れたい。

触れてもらいたい。

私を安心させて。

大丈夫だって。

ギルの声を聞きたい。

――そんな心境が災いしたのか。


「きゃー!ローラ様!姫様!」


なんだか朝から目眩を感じていたのだ。

でもそれも最近食欲のないせいだと、あまり眠れないせいだと、自分を納得させていたのがいけなかったのかもしれない。

突然胃が千切れるかのような痛みが走り、そのまま意識はなくなった。

覚えているのは、シンシアの悲痛な叫び声。

なんだか、ぼんやりと頭の隅の方で私はもう死ぬのかと思った。

それでも良いとさえ思ってしまった。

ただ一つだけ心残りなのは、ギルに会えなかったことだけ。

ただ、それだけ。
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