傾国の貴妃
「…ローラ」
「ローラ?」
「ええ。ローラと申します」
震える声でそう答えた私に、陛下は何度か私の名を復唱した。
シンシア以外の口から聞く、ローラという音。
それだけで、胸が震えた。
「…ローラ。ローラ、か」
陛下はそう言うと、今まで近すぎず遠すぎずの距離を保っていた私に、一歩、また一歩と近付いてきた。
そのたびに心臓が跳ねて遠退きたくなるのを必死に耐えて、私はその瞳を真っ直ぐに見上げる。
せめて、気丈に振る舞っていたかった。
贄である私にも、意志があるのだと主張したかった。
私の強がりとちっぽけなプライド。
陛下はピタリと私と触れるか触れないかの距離で立ち止まった。
ああ、ついに…
覚悟を決めるしか、ない…
「ローラ?」
「ええ。ローラと申します」
震える声でそう答えた私に、陛下は何度か私の名を復唱した。
シンシア以外の口から聞く、ローラという音。
それだけで、胸が震えた。
「…ローラ。ローラ、か」
陛下はそう言うと、今まで近すぎず遠すぎずの距離を保っていた私に、一歩、また一歩と近付いてきた。
そのたびに心臓が跳ねて遠退きたくなるのを必死に耐えて、私はその瞳を真っ直ぐに見上げる。
せめて、気丈に振る舞っていたかった。
贄である私にも、意志があるのだと主張したかった。
私の強がりとちっぽけなプライド。
陛下はピタリと私と触れるか触れないかの距離で立ち止まった。
ああ、ついに…
覚悟を決めるしか、ない…