傾国の貴妃
その言葉はあまりにも予想外なもので、目を見開いて陛下を見た。

陛下は依然、涼しそうな顔をして私を見ている。

背後にあったキングサイズのベッドに崩れ落ちるかのように座り込んだ私に、陛下はフッと笑みを零した。


「…抱くつもりはない?」


「ああ」


「では、何のために…」


私は陛下の子を宿すためだけの存在。

その存在理由を、ずっと果たすことの出来なかったこの一年。

ようやく訪れた、今日という日。

なのに…


「別に。ただ、最近大臣が子を作れと口うるさい。ずっと無視してきたが、そろそろ本当に大臣の怒りが爆発しそうでな」


「じゃあ…」


「俺は好きになった女以外を抱く気はない。人に強制されて女を抱くなんて、お断りだ」
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