傾国の貴妃
――ああ、そういうこと…


陛下の言葉に、一気に肩の力が抜ける。

馬鹿みたいだ。

本当、馬鹿みたい。

今日までに感じた喜びも不安も寂しさも全部、何もかも無駄な感情だった。

王への贄である私に、拒否権なんてそもそも与えられていないのに。

陛下にとって、今目の前にいる私はただの人形も同然なんだ。

最西端に位置するルシュドは、確かにシルフィードにおける権限をほとんど有していない。

この国は、中央に近い邑ほど、その権限も強く、栄えた邑だと聞く。

サマルハーンはその頂点。

そこの姫君であるエリザベート様が、この城の中で一番優遇されているのも当たり前のことだった。

じゃあ、私は?

私は……


「わかったら、今宵は俺に付き合え。良い酒がある」
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