傾国の貴妃
そう言ってニヤリと笑うと、呆然と固まる私の目の前で琥珀色に染まるビンを振ってみせた。

シュポン、といい音が鳴ったかと思ったら、細長いグラスにそれを注ごうとする陛下の姿。


「あ、私が…」


「いい。俺がやる」


それだけ言うと、陛下は私にそのグラスを渡した。

綺麗な色…

ユラユラと揺れるそのお酒は、窓から注ぐ月の光を反射して、美しかった。


「酒は苦手か?」


ただそれを見つめているだけの私に、陛下が問い掛ける。

私はそれに曖昧に微笑むと、ゆっくりと首を左右に振った。


「そうか。美味いぞ、それは。飲んでみろ」


「ええ。いただきます」
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