傾国の貴妃
一口、口に含めて思わず目を見張った。

甘いお酒は口の中いっぱいにその香りを広げる。

もう一口、もう一口…

夢中になる私を可笑しそうに見つめる陛下のエメラルド色に輝くその瞳に、そっと戸惑いの眼差しを向ける。

この鼻腔を擽る香り。

優しい甘さ。

琥珀色の輝き。

私は全部、全部知っている。

どうして?

なんで?

ここ、シルフィード城にはないものなのだと思っていた。

現に、この一年、見たことも触れたこともなかったから。

懐かしさから、一筋の涙が零れ落ちる。

そんな私の頬に、そっと陛下の長い指先が触れた。

涙の痕をなぞるその指先に、否応なしに胸が震える。

陛下の瞳が美しくエメラルド色が煌めいて、優しい光を放っているようにさえ見えた。
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