傾国の貴妃
「ローラ様は、夕焼け空がお好きなのですね」


「…そう見える?」


「ええ。毎日飽きずに眺めていらっしゃるんですもの」


私の一歩後ろでシンシアがそっと微笑むのがわかった。

朱色に染まった立派な庭園。

噴水から溢れ出る絶え間ない水音は、豊さの象徴。

ルシュドにある屋敷に居た時よりも、ずっと豪華な生活。

豪華な食事。

豪華な衣装。

…でも、その全てが息苦しかった。


「綺麗な夕日ですね」


私とそう歳の変わらないシンシア。

シンシアにだって、ルシュドでの生活があったというのに。

笑顔で私について来てくれたシンシアは、今では唯一の私の味方で、理解者で、友達。

知らない土地で、知らない人たちばかりのこのシルフィード王国で、不安なのはシンシアだって一緒だ。

シンシアをシルフィード王国まで連れて来てしまったのは、紛れもない私。

だったら私は強くあらなければいけない。

そう気付いたのは、いつの日だったか。
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