傾国の貴妃
夕日の朱さに自分の決意を重ねていると、馬の蹄の音が颯爽と近付いてくる音が城門の方角から聞こえてきた。

これは珍しいこと。

普段はぴっしりと厳重に閉められた城門。

訓練された騎士だって、交代で配置されている。

外界との世界とを分かつかのように、そこは日に数回程しか開くことはなかった。


「国王陛下のお帰りだわ」


城門から現れた美しい白い馬と、そこに跨る美しい男の人の姿を確認してシンシアが呟いた。

その言葉につられるようにそちらを見ると、長い手足を駆使して颯爽と馬から飛び降りる陛下の姿。

ブロンドに輝く髪が、夕日の下でさえその存在を主張している。

切れ長な瞳。

薄情そうな薄い唇。

まるで作り物のようなその男の人は、近いようで遠い人だった。

散在する邑を一つに束ねる、シルフィード王国の国王。

私がここに存在している理由。
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