傾国の貴妃
――その日、初めてキスをした。

触れるだけの、抱えた傷を慰めあうような、そんな…



小鳥のように震える私は、ただ孤独を嫌っていた。

それはきっとギルも同じ。



唇が触れ合うたび、確かめるようにその腕に触れた。

そのたびにギルは私の名を呼ぶ。

ローラ、と。

だから私もギル、と呟いて。



そしてまたキスを繰り返す。

それだけで安心できた。

一人じゃないと、安堵した。



だからだと思う。

馬鹿な私は気付かない。

エリザベート様の言葉はすっかり、頭のどこかへ飛んでいってしまった。

決して忘れなどしてはいけなかったのに……――
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