傾国の貴妃
ただ、なんとなく。

なんとなく、だけど…

いつの日からか、ギルといると気持ちが落ち着く私がいるのに気付いた。

それは多分、ギルが私と同じ痛みを抱えていて、それを少しずつ、見せてくれるようになったから。

あの日から、この綺麗な男は“陛下”ではなく“ギルバート”になった。

ギルが私を“ルシュドの姫君”ではなく、“ローラ”として接してくれるように。

それが何よりも嬉しくて。

やっとこの城での自分の居場所を見つけられた気がした。


「今度、馬で遠乗りに出るか」


「え!本当?」


「ああ。たまには気晴らしも良いだろ」


それは本当に嬉しい、ギルからの誘い。


「約束ね」


「ああ。約束だ」
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