傾国の貴妃
「今日はどちらへお出掛けだったのかな」


「さあ?存じ上げませんが…」


「ふふ、男の方の所だったりして」


「ローラ様!」


「冗談よ。ただの噂だよね、そんなの」


長い手足を優雅に差し出しながら歩くその姿を見ながら、小さく笑う。

本当に、皮肉なこと。

私は一年もここにいるというのに、私の義務を果たせないでいた。

ルシュドの全てを背負った私は、ただ何もない毎日を空虚なままに過ごしているだけ。

それもこれも、全てあの男のせいだ。

聞く所によると、ゲイだという噂もある。

女に興味がないのか。

それとも別の理由なのか。


「いつか陛下もローラ様の魅力に気付いて下さいますわ」


そんな慰めの言葉も、今はただの気休めでしかなかった。
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