傾国の貴妃
ここまで考えて、自分に笑う。

いったいこんなことを考えて、何になるというの。


「今夜も話相手になってよね、シンシア」


もう、いつの間にか待つことは止めていた。


「ええ。もちろんですわ」


私の義務は分かってる。

どんなに気が進まなくたって、やるべきことはただ一つ。

ルシュドで待つ大好きなみんなが、きっとそれを望んでる。

…だけど、陛下にその気がないというのに、私に何が出来ると言うのだろう。


「確かシンシアが焼いたケーキがあったよね?」


日常はただ単調で、変わることなんてなくて。


「アップルパイですわ」


毎日をただ窮屈な城という名の鳥籠の中で過ごし。


「やった!シンシアの焼くケーキ大好きよ。ルシュドにいた時の優しい味そのまんまなんだもん」


楽しくもないのに。


「ローラ様はルシュドにいた頃と、食いしん坊は変わらないのですね」


微笑む私は、なんて詰まらない人間なのだろうと、思わずにはいられない自分が嫌いだった。
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