傾国の貴妃
「ギル?」


あたしが呼びかけると返事の代わりに私を抱き締める腕の強さが増す。

それが何だか嬉しくて自然と零れ出た言葉。

「大好き」って。

そのまま重なる唇にその身を預ける。

夜はまだまだ長い。

この時が永遠に続けば良いのに、と無茶なことさえ思う。

ギルと目が合う。

その瞬間が一番幸せ。


「ローラは細いな。しかも小さい」


「そう?」


「ああ。乱暴に触れでもしたら折れてしまいそうだ」


「クスクス。そんなことないよ」
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