傾国の貴妃
思わず笑ってしまった私にギルが不機嫌そうにその綺麗な眉を寄せた。

強い意志を示すかのようにその眉は凛々しく、その秀麗な顔を彩る。


「そんなに怒らないで。ごめんね」


「…別に怒ってなどない」


「うん。そっか。ふふ、ごめんね」


いつもは国王として、感情を表に出すなんて有り得ない。

そんなギルが私の前でだけまるで子供のように感情を露にしてくれるのが嬉しかった。

そんなことを言ったら、またギルは怒ってしまうんだろうけど。


「準備は終わりそう?」


「ああ。あと少しだ」


「そっか。偉いね」


頭を撫でる。

さらさらの金髪が私の指先を通る。

ギルは擽ったそうに少し身を捩るが、私の手を拒むことはなかった。

それがまた嬉しかった。

ギルは私を拒まない。
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