冷徹王子の甘い笑顔


翌日、学校。
昨日、家に帰ってから皇坂くんの笑った顔が忘れることができず全然眠れなかった。

「ふぁ~っ・・・」

学校についてからずっと欠伸をしている。

「弥兎眠そうだね?」

「うん、ちょっと昨日眠れなくて」

「なにか考え事?」

「うーん、まぁ、そんな感じかな?」

「そっか、何かあったらいつでも相談してね」

「ありがとう」と咲羅に返事をするが、
昨日のことは誰にも話すつもりはなかった。

皇坂くんは話せばいい、と言っていたが私が話したくなかった。
あの笑顔を誰にも知られたくなかった。

まだ登校していない皇坂くんの席を見つめる。
私の席が窓際で、皇坂くんは廊下側。
教室の中だと一番遠いところだけど、昨日の笑顔を知ってしまったら
この学校中の誰よりも近い存在になってしまったんじゃないかと思ってしまう。

いや、そんな大袈裟なことじゃないか、と思い直し
咲羅に話しかけようとしたとき、

『キャー!!!』

廊下から女子生徒の黄色い声が聞こえた。

いつもだったら何とも思わないのに
今日は何故だかドキドキしている自分がいた。

教室の入り口に視線を移す。
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