冷徹王子の甘い笑顔
みんなの視線を集める中、皇坂くんはいつもと変わらず教室に入ると
周りを見ようともせずに自分の席に座った。

そしていつものように両耳にイヤフォンを挿し、難しい本を読み始める。

「今日も相変わらず、だね」

咲羅の言葉が聞こえるが私は何も言えなかった。

「弥兎?」

「え?あ、ごめん。ボーっとしてた」

「本当に大丈夫~?寝不足もほどほどにね
ちょっとお手洗い行ってくるね~」

「うん」と咲羅に返事をし、教室からでていく彼女の姿を見送ったあと
皇坂くんの席をチラッと見るが、本に夢中なのか目が合うことはなかった。

まぁでもそっか。
たったあれだけのこと、皇坂くんにとっては何でもないことだよね。
変に舞い上がってた自分がバカみたい。

少しだけ近付けたと思った自分が恥ずかしくなった。

冷徹王子だもん、近付けるわけないのに。

「はぁ・・・」

無意識にため息がでる。
昨日のことは忘れよう。
それが一番かもしれない、何も知らなかった頃に戻ればいい。

「・・・」

ダメだ、
ふと思い出してしまう。
あの綺麗に優しく笑う皇坂くんを。

「・・・忘れるっ」

自分に言い聞かせるように小さく呟くと、携帯を開き今日の運勢をチェックする。

「うわ、今日最下位だ・・・」

ガックシと肩を落とし、机に突っ伏した。
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