冷徹王子の甘い笑顔
「どうして私に話しかけてくれたの?」

「燈真に伝え忘れたことがあったから」

そこまで言うと私から視線を外し窓の外を見た。
太陽の光が車内に差し込んでいた。

「前に1度だけ2週間くらい公園に行けなかった時があるんだ。
その時に燈真はもう俺が来てくれないと思ったらしくて。
久しぶりに公園に行ったら半泣きになりながら抱き着いてきてさ。
燈真の涙を見たとき、きちんと伝えないとダメだって思ったんだよな。
だから、その日を境にしばらく行けなくなる日があると伝えるようになったんだ」

その横顔に先ほどまでの冷たさは残っていなかった。

「優しいね」

窓の外を見ていた皇坂くんが少し驚いたように私を見た。

「どこが?って言いたそうな顔だね」

図星だったのか気まずそうに下を向く。

「燈真にバスケを教えてくれている時点で私は優しい人だなって思ってたけど、
まさかここまで優しかったとは」

「ふふっ」と笑ってしまった。

「さっき相手の気持ちに踏み込みたくないし、踏み込まれたくないって言ってたでしょ?
少なからず皇坂くんは燈真の気持ちに踏み込んでくれているよ。
それが悪いってわけじゃないし、私としてはむしろ嬉しい。
だって燈真、本当に嬉しそうなんだもん。
弟の嬉しそうな顔を見たり楽しそうな声が聞けるのは姉として幸せなことなんだよね

だからっていうのも変かもしれないけど、
これからも燈真の気持ちに踏み込んでくれないかな?
その代わり、私たちは皇坂くんの気持ちには踏み込まないから。どう?」

「・・・」

途中、皇坂くんはゆっくり顔を上げ、私をじっと見つめていた。
驚いているのか何も言わない。
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