冷徹王子の甘い笑顔
『ドアが閉まります、ご注意ください』

電車のドアが閉まり、発車したあとも私は動けずにいた。

「え、なにが、起きて・・・?」

頭の整理が追い付かず、やっとのことで言葉にできたのはその一言だけだった。

「えっ、え?」

皇坂くんの笑顔と言葉が脳裏に焼き付いて離れない。

【俺と逢原さん2人だけの秘密、だな】

「~っ///」

顔が熱くなるのが自分でも分かった。
秘密って、なに?
私と皇坂くん2人だけの・・・?

「あの笑顔は反則だよっ」

誰にも聞こえない小さな声で呟く。
あんなにも優しく笑うなんて知らない。
知らない・・・。

「あ、そっか」

そこであることに気付き、バッと窓の外を見る。
前に見た同じ高校の制服を着た男子高校生って。

「皇坂くんだったんだ」

全然気付かなかった。

『次はー、〇〇駅、〇〇駅になります。』

車内アナウンスが聞こえ、鞄を持ち立ち上がる。

『ドアが開きます、ご注意ください』

「明日どんな顔して会えばいいんだろう」

プシューッ

ドアが開き電車を降りる。

赤い顔を隠すように駅の改札を抜け、家までの道のりを歩く。
いつもの帰り道のはずなのに何故だか少しだけ景色が輝いて見えた。
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