冷徹王子の甘い笑顔
「まあでも、クラスの中で一人でも話が出来る人がいるのはまだいいのかな」

「ほとんど柴田くんから話しかけてるけどね」

「今日の体育の時間もそうだったね。
皇坂くんも少しは笑ったりすれば冷徹王子なんて呼び名もつかないと思うのに」

咲羅が言葉にした冷徹王子という呼び名。
皇坂くんが学校内で呼ばれている名前だった。

「きっと何か言えない事情があるんだよ」

「事情ね~、まっ、私たちには関係ないか」

そう言って咲羅が歩みを止めた。

「じゃあ、私は向こうだから。
また月曜日ね!」

「うん、また月曜日!ばいばい」

駅に着き、咲羅と別れ駅のホームまで向かう。
電車で通っている私は家まであと1時間はかかる。

「家に帰ったら何しようかな」

そんなことを考えながら電車に乗り込む。
私が住んでいる地元から今の学校に通っている人は少ないため、
最寄り駅が近付くにつれ同じ制服を着た学生は少なくなる。

1時間かかるし、同じ学校を通ってる人なんて少ないだろうなぁと思いながら
最寄り駅の一つ手前の駅で何気なく外を見たとき

「あれ」

遠くで少し分かりづらかったけど、同じ学校の制服を着た人が歩いていた。
顔は分からなかったが、男子生徒だった。

「同じ学校の人いたんだ」

しばらく目で追いつつ、姿が見えなくなると携帯に視線を戻し、
咲羅からきていたメールに返信をした。
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