冷徹王子の甘い笑顔
第1Qよりシュートは決めたが点差は埋まることなく第2Qも終了した。

選手がベンチに戻ってくる。
その瞬間、皇坂くんが立ち上がり燈真のチームがいるベンチの近くまで歩いて行った。
慌てて私もついていく。

「燈真!」

「っ!」

突然名前を呼ばれビクッと肩を震わしながら、燈真は私たちがいるほうへ顔を向けた。
その顔は今にでも泣きそうだった。

「燈真、焦るな。呼吸をしっかりしろ。
ボールをきちんと見たら動けるはずだ。
俺はそれを知っている、気持ちで負けるな。」

応援席は2階席みたいな形になっているため、
声が届く範囲ではあるが、近くといっても距離はかなりあった。
でも、皇坂くんの声はしっかり燈真に届いていた。

力強く頷くと、さっきまでの泣きそうな顔が嘘だったかのように
どこか吹っ切れたような表情になっていた。

「もう大丈夫だろ」

皇坂くんはそう呟くと黒田さんのほうを見た。
黒田さんも皇坂くんのことを見ており、しばらくお互い見つめ合ったかと思うと
パっと視線を逸らした。

「皇坂くん・・・?」

恐る恐る声をかけると「もう大丈夫」とだけ言い、微笑んだ。
皇坂くんが大丈夫と言ったら不思議と大丈夫な気がしてきた。

もう一度、燈真を見る。
目つきはさっきより鋭くなっていた。

第3Qが始まる。
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