冷徹王子の甘い笑顔
「そう言えばさ、」

徐に皇坂くんが口を開く。

「ん?」

「試合の終盤、ずっと泣いてただろ?
あれってさ・・・」

聞きづらいのかその先からは黙ってしまった。

「んー、半分は皇坂くんが思ってることで間違ってない、かな」

「感動した、ってことであってる?」

「うん、あってるよ。胸にグッときたの。
燈真が大会までの間、頑張ってきたこと知ってるから色々な思いが溢れちゃった。
でもそれ以外にも理由があって」

そこで「ふぅ」と息を吐く。
私の言葉を待っているのか皇坂くんは何も言わない。

「燈真ね、元々体が弱くて運動が全然できなかったの。
小学生の頃も何回も体調崩しては早退したり、休んだりしてて。
思いっきり体を動かすことが出来なくて燈真自身もきっとモヤモヤしてたと思う。」

あの頃の燈真を思い出すと今でも少し胸がチクっと痛む。

「中学に入って部活は文化部に入ると思ってたから、
燈真に「バスケ部に入りたい」って言われたときは家族で全力でとめたんだ。
でも、燈真の熱量に負けて親が入部を認めたの」

「俺、頑張りたい!!!」って泣いて訴えていた燈真の姿は今でも覚えている。
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