第三者

ep_1 <表舞台>

「ねえ、見てあれ悔しがってるよ」
ザワザワ…

…客席の喧騒が一つになって'惨めな女だ'
と言う音が聴こえる

私が何をしたというのか。
真実なんて知らないくせに。
誰にも届かない愚痴を頭に浮かべ、
ただその場を凌いでいた

わたしの視界の片隅に…いた
華やかな証明に照らされた一角には、
誰もが羨むツーショットがあった

別に、もう、隣に並びたいとか思ってないけど
そんな自分の不遇さに心の中心で黒い感情が揺らいだ

「、っ」

彼の仲間が耳を塞いでくれた

「…へへ、大丈夫ですよ」

作り笑いのような苦笑いを浮かべながら
久しく縁のなかった優しさに目の前が滲んでいく

でも決して零すことはしない

「あっ、」

彼がその手を払った

「っ!」

私の腕をとって強引に引き寄せられる

一瞬の動揺と、呆れる胸の高鳴りを振り払って

肩を押し返すと
意外にも簡単に離れてしまったその距離

どんな表情でこんなことをしてるのか…
顔は見れなかったし見なかった

周りにはカメラもいっぱいある
そして何より彼のファンの人達がいる

私の出る幕では無い
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