触れたい、cross
「……きゃ…ッ…?!」


勝手に喉から悲鳴が漏れたの、は。


「…ふふ。かーわい」


いつまでも動かない私の右耳に、伊織くんが息を吹き掛けたから、で。


その拍子に、胸を覆っていたシャツが、膝の上に落ちた。


「やればできんじゃん?」


さっきとまったく同じセリフを吐き出す、くちびる。


そのくちびるは、リップさえ塗っていないのにいつも、ふんわり光を放っている。



< 11 / 97 >

この作品をシェア

pagetop