触れたい、cross
一息ついて、私もカップをローテーブルに、置いた。


ことり。と、静かな部屋に音が響く。


仲良く、湯気をたてている、黒いマグカップ。


伊織くんが、何度目かにこの部屋に来たときに、持ってきてくれたもの、で。


ふたつともおんなじ色だったら、どっちがどっちのか、わからないんじゃない?


問いかけた、私、に。


「どっちのが、どっちのでも、いーでしょ。海乃さんのものはオレのもので、オレのものは、海乃さんのものでしょ?」


…それは、この関係のことを言っているのだろうか…


相変わらず、本音は聞けずじまい。



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