触れたい、cross
スーツケースの中に、折り畳みの傘が入っているのを思い出したけれど、こんなところでスーツケースを開けたら、当然のことながら中の荷物がびしょびしょになってしまう。

  
呆然としたまま、立ち尽くすしかなくて。


回りを見渡すと、少し先にカフェらしきものがあるのが見えたけれど。


こんなに、頭の先から爪先まで濡れ鼠では、入らせてもらうわけにはいかないな。


思いながら、真っ直ぐに歩く。


カフェの前には、『カフェ みちくさ』の看板が出ている。


カフェ、というか、喫茶店、というのがしっくりくる、古くさい作り。


看板も、喫茶店ともスナックともとれるようなものだ。


横目で、ちらちらと、その看板を見ながら、そのカフェの前を通りすぎた。







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