触れたい、cross
すみません、口のなかでちいさくお礼を言って、タオルを受け取った。


一瞬触れた指先は、思いのほか、あたたかい。


「テキトーに、座っててください」


言いながら、奥に歩いてゆく背中を見つめる。


髪の毛を拭って、服の上からもタオルを押し当てる。


なんとか、気持ち的にもマシになって、ちいさく、ため息をつく。


「…どーしたんすか?突っ立って」


自身も、髪の毛をタオルで拭きながら戻ってきた、彼。


「…あ、いや…ソファー、濡れちゃうので…」


「…気にすること、ないのに」


「…いや、でも…」


……、


……、


一瞬、空中で視線が絡んで、どきり。と、する。









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