触れたい、cross
背中で、カラカラとドアベルが鳴る。


その音のがしたほうに、反射でカラダを向ける。


「あら、こんなどしゃ降りなのに、お客さん?」


女性、だ。


シンプルなワンピースがよく似合っている。きっと高いワンピースなんだろうな。


私の着ているシャツとは、雲泥の差、だ。


緩くまとめられた髪の毛も、ベージュのネイルも、センスがいい。


60歳くらい、だろうか。


彼に話しかけた、女性。


「客、っつー、か。拾ったんです」


彼の声が、店内に響いた。



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