触れたい、cross
「『拾った』だ、なんてー。ごめんなさいね。伊織くん、ぶっきらぼうだから」


でもね?コーヒーを淹れるのだけは上手なのよ?


言いながら、彼女が私の目の前に出してくれた、コーヒー。


「オーナー、『淹れるのだけは、』って、なんすかー?『だけは』ってー」


カウンターの向こうで、彼が気怠そうに突っ込んでいる。


「あらー、ほんとのことじゃない」


ね?


なんて、おだやかに私に問いかける。


…あぁ。とか、はい。とか、いえ。とか、曖昧に頷いた。



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