触れたい、cross
「さ、熱いうちに飲んでくださいな」


美味しいから。


再度、カップを勧められて、軽く頭を下げる。


そのままカップを持ち上げて、口もとに運んだ。


澄んで、いる。


コクがあって、苦味もちゃんとあって、でも、甘い。


「…こんなに美味しいコーヒーは、はじめて、です」


「そうでしょう?伊織くん雇って、良かったわー」


彼の方を仰ぎ見る、彼女。


…おや…?と、思う。


彼女の頬が、刷毛ではいたように、さっと、紅くなった、から。


そんなしぐさ、は。


コイスルオトメ、の、よう。


…もしかした、ら。






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