触れたい、cross
「早くー。風邪引くっすよー?」


いつまでも歩き出さない私を感じとった彼が、くるり、と、振り返った。


その口調は、相変わらずぶっきらぼうだけれど。


もしかしたら、他人に気を遣わせないためなのかも知れない、な。


なんて、無意識に考える。


会ったばかりの、相手に。


他人に深入りするのは、危険だ。


今までの経験がそう、本能的に告げている、のに。


気がつくと、一歩、一歩、と。


足を前に進めている。




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